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「私は、過去に生きた人々の魂によって創られた。そう感じることが出来る。
汗と涙に生きた多くの先人たちが、多分、私を創ってくれたのだろう。六十歳
を越えた頃から、私はずっとそう感じ続けて来た。そう考えたとき、私は自分を
創ってくれた「魂」をまとめてみたいと感じたのだ。そのような考え方で、私は
自己の座右銘と成っていた言葉の数々を、毎週一つずつ世に問うて来た。それが
もう三年以上になった。そろそろ、一冊の書物にまとめる時期だと思う。」
「本書は、六十年以上に亘って呻吟し慟哭し続けた私の魂が求めたものの記録である。
形にすれば、それは一冊の本だが、この中には私の一生涯の苦悩と涙と喜びが詰まって
いる。小学生のときに抱いた「志」から、七十歳近くまでの「憧れ」のすべてが
ひしめいていると言ってもいいだろう。ここに挙げた百九十の思想は、私が死ぬ日まで
抱き締め続ける、私自身の人生そのものに他ならない。
早いものは、先に触れたように小学生の頃に立てた志である。しかし、それがどの
程度達成されたのかは問わないでいただきたい。自分自身の不甲斐なさは、私自身が
一番分かっているつもりだ。何しろ、小学生で立てた志も、いまだ達成出来ないで、
私は日々嗚咽しているのだ。座右銘を持てば、自己の卑しさと対面することと成る。
座右銘とは、決してすばらしいものでもなく、また美しいものでもない。
それは自己の弱さを認識するための指標なのだ。」
「座右銘は、私にとって辛く悲しいものだった。しかし、その苦悩が、本当に自分
自身だと感ずる自己を養い続けてもくれたのだ。私が感ずる自己とは、全く不甲斐なく
卑しい自己だった。その自己が、その自己のまま、どうしたら「魂の崇高」に近づく
ことが出来るのか。そういうことこそが座右銘によって養われた私自身なのである。」
「願わくは、私が苦しみ続けた座右銘の中から、何か自分に感応する思想を見つけて
くれる読者が出てほしいと思っている。そして、感応する思想に出会ったならば、
それに人生を懸けてほしいのだ。そうすれば、苦しみが襲って来る。
しかし、その苦しみこそが、その人の本当の命を削り出してくれるのだ。自分の
本当の命と対面することは、人生最大の幸福をもたらしてくれるに違いない。
私が人生を共にした私自身の「人生のロゴス」は、必ずや他の人々のロゴスとも
成り得るものと信じている。是非にも、ここから自己のロゴスを見出してほしい。
そして、そのロゴスに、あなた自身の人生のすべてを懸けてほしいのだ。」
まえがきより
<目次より>
no.1 エルンスト・ブロッホ 現実の創世記は、初めにではなく終わりにある。
no.2 ジョン・ミルトン 正しく立てる者も自由に立ち、堕ちた者も自由に堕ちたのだ。
no.3 アラン 魂とは、肉体を拒絶する何ものかである
no.14 ミゲール・デ・ウナムーノ 真の愛は、苦しみの中にしか存在しない
no.26 アーノルド・トインビー われわれの運命は、われわれ自身の手中にある
no.33 ニーチェ 人間は、克服せらるべき「何ものか」である
no.52 無門慧開 百尺の竿頭に立ちて須く歩を進め、十方世界に全身を現ずべし
no.65 中河与一 すべて見えるものは、見えないものの崇高を証明するための
no.78 荘子 生を殺す者は死せず、生を生かす者は生きず。
no.91 ロマン・ロラン 英雄とは、自分に出来ることをする人間のことだ
no.93 福田恆存 私たちが欲しているのは、自己の自由ではない。自己の宿命である。
no.114 アンドレ・マルロー 芸術とは、反運命である。
no.128 川端康成 それは一芸に執して、現実の多くを失った人の、悲劇の果て
no.145 小林秀雄 上手に思ひ出す事は非常に難しい。
no.149 大川普済 古を裂き、今を破る
no.179 堀田善衛 人間存在というものの根源的な無責任さ
no.188 竹本忠雄 往け いまこそ わが影よ! 他